大槻香奈 個展「空の殻」(からのから)@DMOARTS


大槻香奈は京都を拠点に、全国各地で展覧会を開催する美術作家。
一貫して「蛹」をテーマに制作を続け、代表的シリーズである
少女のポートレート像、抽象的な美術表現、イラストレーションなど、
表現の幅を広げて精力的に活動してきました。
DMOARTSでの個展は3年連続、3度目となります。本展では、
原画作品約50点の展示に加え、高画質美術印刷であるジークレープリントで
制作したMy First Artの新作、ポストカードセットをはじめとした
グッズなどを展示・販売いたします。

空の殻
「空の殻(からのから)」2015年 1000×1000mm キャンバス・アクリル


2007年より作家としての活動を続け、今年で8年目になる。
私の作品は全て「蛹(さなぎ)」という概念で説明する事が出来、
制作において最も重要なテーマとしてある。
蝶の蛹を、「幼虫の死」と「成虫の生」とが同居しているものだと考えてみる。
幼虫は蛹室の中で身をドロドロに溶かすので、どこから幼虫の死がはじまって、
どの段階から成虫(新たな生)として捉えられるものなのか、外側から
観察してみても分かる事ではない。
生と死が捉えどころの無いものとしてありながらも、ひとつの生命体として
ただそこに「存在」している…、
そう考えると現代を生きる人達の多くはとても「蛹的」な気がするのだ。

蛹というテーマが作品に色濃く出て来たのは震災以降だった。
震災後、日本が生まれ変わる希望のイメージとして、蛹のモチーフを作品に
意識的に取り込んだ。私たちはいま蛹の時代を生きていて、
いずれ蝶になるための準備期間なのだと…。
しかしいま、私が日本で感じている漠然とした空虚さは、例えるなら空っぽの
蛹の中にいるような感覚なのだ。希望の象徴だと思っていた蛹の中身が
空っぽだった事に、なんとなく気付いてしまったのである。
震災から4年経ってみえてきたのは、日本はきっと確固たる「アイデンティティ」
(蛹の中身)を、戦後ずっと探し求めているという事だった。

それは蛹に例えられる「思春期の少女」の姿にもよく似ている。
私自身も少女時代を過去に過ごしたが、空虚さの中で必死にもがいて生きている感覚は、
現代の日本に生きる感覚と近いように感じられた。
現代日本は蛹的であり、また少女的なのだ。
あらゆる可能性を秘めていると信じたいが、まだ何者でもない存在。

しかし、この空っぽの蛹(日本)の中でも、私たちは確かに存在している。
この空虚さは誰のせいでもなく、私たちそれぞれひとりの人間は、常にこの世界で
「どう生きるか」を問われ、答え続けていかなければならない。それが生の実感なのだ。

私にとって、この蛹の殻の中で作品をつくるという事は、現代や私たちの姿を映す「鏡」を
つくるような感覚なのだ。どこかで現代の日本の姿を捉えていること。
そこに確固たる何かを見つけて貰えたのなら、作者として幸いである。
それはきっと、いずれ蝶になりうる蛹の中身となるかもしれない。
大槻香奈



●展示期間
2015年8月5日(水)〜8月25日(火)
時間:10:00〜21:00 ※最終日のみ18:00閉廊
レセプションパーティー:8月8日(土)18:00〜21:00
※入場無料


●会場
大阪市北区梅田3-1-3 (LUCUA 1100 B1F)  
電話 06-6485-7341 




大槻香奈 KanaOhtsuki プロフィール

1984年生まれ、京都在住の美術作家。
少女モチーフを通して、主にアクリル画で現代を表現している。
2007年より活動をスタート。国内外問わず様々な展覧会に参加し、
国内では年に約一度個展を行っている。
またイラストレーターとしても活躍の場を広げ、2014年には
「ILLUSTRATION 2014」にも掲載されている。


 






禍家 (角川ホラー文庫)
三津田 信三
角川書店
2013-11-22


鳴く女 (TO文庫)
福谷修
ティー・オーエンタテインメント
2014-03-01








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Chuo Line Record
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