石野平四郎『O-M-O-T-E』@ラディウムーレントゲンヴェルケ


 石野平四郎


石野平四郎は1992年神戸市生まれ。今年神戸芸術工科大学を卒業したばかりの、
レントゲンヴェルケの扱いでは最も若いアーティストである。

実質的なデビューともいえる2013年のスパイラルインデペンデントクリエイターズ
フェスティバルで準グランプリを獲得し、その強烈な表現が話題をさらう。
「フィギュアと彫刻の交点になる、新しい表現のカテゴリーを創り出したい」
という野望を語った若干20歳のアーティストは、その後参加した「巧術」シリーズ展や、
国内外のグループ展、アートフェアでも注目を浴びる事となった。

彼がモチーフとするのは、日々様々なメディアから彼自身がイメージを吸収している
伝説上の怪物や神あるいは支配者など、通常の人間を超えたものの姿である。
それらはオタク文化、マニア文化の隆盛とともに過剰ともいえる進化を遂げた
フィギュアの造形に影響を受けたマニアックな視点からイメージされる
インターフェースと、彫刻の持つ芸術性や本質に対する交点を探る作業の結果
(あるいは過程)という事が言えるかもしれない。

前述のマニアックな視点と、自らの中にくすぶり続ける自我にはさまれ、
制作は悶々たるものであると彼は言う。しかしその作業が、具体的な原型を
留めない実体と、熱情の揺らめきとを混じりあわせたような独特の造形を生み出して
いるのである。その姿勢は彼の言う「フィギュアと彫刻の交点になる、
新しい表現のカテゴリーを創り出」すものになるのだろう。
混沌とした彼の制作における概念は、サブカルチャーのもつ自由な感覚と相まって
これまでの表現の枠組みからはみだし、新しい表現の価値観を見出すものとなるのでは
ないだろうか。

今回、石野は仮面をモチーフとした大作7点を中心とした新作を発表する。
造形的な考えに基づくと、仮面の持つ正面性は彫刻のカテゴリーとは相容れないもの
という事が言えるかもしれない。しかしながらこれまでの作品群はいずれも立体
でありながらも強い正面性を持ち、そのスタイルが仮面という造形へ移行しているのは
むしろ必然だろう。
また、躍動感あふれるフィギュアの瞬間性に等しいインターフェースは、
石野が図像的に時間を切り出している事を意味している。
これはまた見る者を不安にする程の空洞を持つ構造に象徴されうる。
石野はこうした「欠落」による自作の構造をこれまで無意識に創り出していたが、
今回の「仮面」の製作中にその在り様を自ら発見した事を興奮気味に告白した。

村上隆は個展「WILD,WILD」(1992)において、前提として絵画ではあり得ないながらも
平面のような正面性を持ち、フォーマリズムにアンチする形での「非彫刻」であり、
同時に建築のような構造をもちながらもちろんそれでもないという「WILD#1,#2,#3」
を発表した。
自在置物が今ほどの評価を得る以前からその制作に邁進していた満田晴穂は現代美術を
自作の着地点として選ぶ事でその存在を確立させた。
伝統的な価値観に基づかない形での着地点をもとめる石野の姿は、そうした先達たちが
理論的に構築してきた「在り様」を感覚的、本能的にトレースするものであるかもしれない。
今回の個展がその最初の回答になるだろう。


●会期
2015年9月10日(木)〜10月31日(土)
11:00~19:00
休廊日:日曜日、9月24日〜26日
¥無料

オープニング・パーティ 2015年9月11日(金)18:00〜

●会場
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
TEL 03-3662-2666