安藤栄作 個展『約束の船・2016』@Gallery OUT of PLACE NARA


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安藤栄作は、2011年3月11日に起きた東日本大震災と巨大津波によって、
アトリエはもとより保管していた作品など、家財の一切合切を無くしている。
更に原発事故に追い討ちをかけられるように移住を余儀なくされ、
現在は関西を拠点に制作活動を続けている。

昨年開催された【学園前アートウィーク2016】(奈良市)で、私ははじめて
安藤と一緒に仕事をさせてもらった。
ある大企業の社長の古い邸宅がその舞台となったのだが、安藤はその一室に
船あるいはカヌーの形をした木彫を設置した。
ただしその船は中央で二つに切断されており、大きなガラスの窓越しに半分は
野外に雨ざらしの状態で、半分は屋内に展示された。
まるでガラスの内側から外側に向かって突き抜け、2つがつながっているかの様に...
安藤は何を意図してこの作品を創ったのだろうか? アートイベントのテーマ
「イマココカラ」は、空っぽになって行く日本の街(地域)に対して出展作家から
なんらかの提言をしてもらおうと付けられたものであったが、安藤は自身の体験を元に、
世界に安全な場所などは無い、不安は大きくとも未来に向けて漕ぎださねばならないと、
この作品を通して訴えていたように思える。
船の形はしていてもそれは単なる乗り物ではなく、我々に進むべきベクトルを示す
方位磁石の針のようなものであったと、後日作家自身も語っている。

安藤には、昨年来それと同時進行で創り続けているもう一つの作品「ガザのこども達」
というプロジェクトがある。
これは、2014年イスラエル軍によるガザへの軍事侵攻によって犠牲になった、
パレスチナのこども達の「鎮魂」のために始まった作品だ。
安藤はまるでなにかに憑かれたかの様に、今も毎日休む事無く一体一体彫り
続けているものだ。
現在そのヒトガタの数は、既に千体を越えている。 
千体の木彫群を目にした者は、そこから強いオーラが発せられるのを感じずにはいられない。
それらはもはやガザのこども達を通り越え、世界中のすべての人間に向けられた安藤の強い
「鎮魂」の思いに他ならない。

今回 Gallery OUT of PLACE では,'15〜'16 に安藤の手によって彫り出された2つの別の
作品が、敢えて同じ空間で展示される事になる。
安藤が振り下ろす斧によって彫りだされた千体の「ヒトガタ」と、船の形を借りた木の
造形物が指し示す「ベクトル」。
そして穿たれた無数の刃の痕に、来場者はまさに日本の進むべき未来を透視する事になるだろう。
(文 : Gallery OUT of PLACE 野村ヨシノリ)



安藤栄作  Eisaku ANDO

1961 東京生まれ
1986 東京芸術大学美術学部彫刻科卒業
1990 福島県いわき市の山間部に移住
2007 いわき市の海沿いに移住
2011   東日本大震災の津波により家を流され、原発事故を機に奈良県明日香村に避難
2012 奈良県天理市に移住
 
個展(2001~ selected)
2016 TO SOUL FROM SOUL・安藤栄作展/MU 東心斎橋画廊, 大阪
2015 安藤栄作展・七福島神/ギャラリー勇斎, 奈良
安藤栄作展/ギャラリーアーティスロング, 京都
安藤栄作展/堤側庵ギャラリー, 三重
2014 ほにゃらか彫刻展/GALLERY TAGA 2, 東京
AFFECTION・安藤栄作彫刻展/ギャルリー志門, 東京
シャンバラ・安藤栄作個展/ギャラリーあしやシューレ, 兵庫
2013 光のさなぎ・安藤栄作展/APS&ギャラリーカメリア, 東京
光のさなぎたち・安藤栄作展/原爆の図 丸木美術館, 埼玉
やおよろず会議・安藤栄作展/ギャラリーメゾンダール, 大阪
2012 ドローイング&彫刻・安藤栄作展/ギャルリー志門, 東京
ドローイング展・安藤栄作/沖縄芸術大学, 沖縄
鳳凰・安藤栄作展/ギャラリーあしやシューレ, 兵庫
2011 Age of Soul・安藤栄作展/ギャルリー志門, 東京
天と地の和解・安藤栄作展/橘画廊, 大阪
2010 a piece of space APS, 東京
2009 Being・安藤栄作展/アートワークスギャラリー, 茨城
天の果実・新たな共生の芸術を求めて・安藤栄作展/ギャルリー志門, 東京
安藤栄作・野生の記憶/京都造形芸術大学芸術館, 京都
2007 Breeze of Soul・EISAKU ANDO/エキジビションスペース・東京国際フォーラム, 東京
2003 N・E・blood 21 vol6 EISAKU ANDO/リアスアーク美術館, 宮城
2001 アボリジニに捧ぐ―森の人からのメッセージ・安藤栄作展/いわき市立美術館, 福島
 

●会期
2016年8月19日(金)~9月25日(日)
月・火・水曜日 休廊

●会場
奈良市今辻子町 32-2
Tel・Fax 0742-26-1001
木曜日〜日曜日 12:00〜19:00開廊 
※月火水 休廊