美術館「えき」KYOTOで開催中の、開館20周年記念
京の至宝 黒田辰秋展に行ってきました。
 
(※特別に許可を得て撮影しています。)

黒田辰秋展_2242


素晴らしい作品だらけですが、その中から少しだけ紹介させていただきます。



黒田辰秋展_9772

 
入り口すぐには、今回のメインビジュアルにもなっている「金鎌倉四稜捻茶器」。
手仕事とは思えない正確で滑らかな螺旋状の稜と鮮やかな朱が印象的で
この小さなサイズ以上の存在感があります。
名前にもあるように、朱が鮮やかな発色になるよう下地には金箔が貼られているそうです。




黒田辰秋展_1362

 
また同じような形状の「白壇塗四稜茶器」はまるでブロンズのような重厚感に加え、
木の温かさを醸し出しています。
(なぜこちらには「捻る」という文字が入っていないのか不思議ですが)





黒田辰秋展_5285
 
かぼちゃのようなフォルムの木の壷は「白タモ葡萄杢インク壷」。
葡萄の木を使っているのではなく、葡萄杢とは木が作るコブによって
木理が葡萄のように小さい円形に連なった模様のことをいいます。
これは志賀直哉の遺品で、ここに入っていたインクで数々の名作が
生み出されたかと想像すると一際感慨深いですね。
これを制作中に父の死が重なったという辛いエピソードも。
(写真がピンボケですみません…)


 
黒田辰秋展_6052
 
これでもかといわんばかりに光を放っていたのは、鍵の絵と鍵・善・良・房
の文字から成る「螺鈿くずきり用器」。
輪島の慶塚漆器工房製の信玄弁当の型を模した器なんだそう。



黒田辰秋展_1886
 
落ち着いた色合いの躯体に写実的な蝶が描かれている「彩漆群蝶図手筺」
と抽象的な紋が描かれている「沃地色漆紋づくし手筺」。
ふたつが展示されている間には大きな図案スケッチも飾られていますが、
実は表は群蝶図、裏面には紋づくしというリバーシブルになっているそうです。
両面同時に見れないのが惜しいですね。

黒田辰秋展_4309



 


黒田辰秋展_3267
 
「梅紙刀」と「黒柿紙刀」は実にCOOL! 持ち手を眺めていると
つい手が伸びてしまいそうで、プロダクトデザインとして発表されていても
違和感無いようなフォルムです。(写真だとのっぺりしてしまってますが…)



 黒田辰秋展_7117
「赤漆流稜文飾手筺」の構想も面白く、螺旋状というと球体(曲面)に
沿って存在するという固定概念には捉われず、直方体化されています。

黒田辰秋展_260
こちらは、そのスケッチです。



 黒田辰秋展_1618
「螺鈿総貼小棚」の存在感は群を抜いてます。とにかく派手なんですが、
部分的な模様や装飾に使うという概念から飛び出して、素材の持つ装飾力を
最大限に活かしている作品です。



黒田辰秋展_669
 
螺鈿作品の中で一番のお気に入りは「乾漆八稜水指裡耀貝螺鈿」。
外にギラギラとした光を放つのではなく、なんと内側に螺鈿を敷き
詰めてあるのです。

どうしてこんなことが可能なのか?!まず粘土で雄型を作りそれに螺鈿を貼り、
さらに乾漆で覆って乾いたら水に漬けるんだそうです。
そうすると粘土が柔らかくなるので掻き出すと球体状の中に貼り付いた
螺鈿が出来上がるという。すごいです!

そして外観も石肌のような面と美しい八稜のラインは最高です。



黒田辰秋展_4514
 
大正時代の終わりころ、ボタンの材料としてメキシコ鮑が輸入されて
いたんですが、豊潤な色層を持つ中央部分はボタンにするには強度が
なく不要品とされていたため、黒田辰秋はタダ同然で引き取り保管し、
螺鈿として使用するまでに10年を経たとも。

 
螺鈿は曲面の貝殻を平面に貼るので、必然的に分割にして貼っていく
わけなんですが、繋がる模様は必ず同じ貝殻を使用するのが法則なんだそうです。
しかももっと言うと、カットする際にグラインダーを使用するのですが、
完全にグラインダーでカットしてしまうと刃の厚み分がなくなってしまうので、
外側から2/3程度切り込みを入れて残りはパキッと折るのだそうです。

黒田辰秋展_9993


 
他にも衣桁や箪笥などの家具もあり何時間も眺めていれる空間でした。

黒田辰秋展_255


黒田辰秋展_7940

 
壁面に刻まれた言葉「黒田辰秋語録」も情景を思い浮かべて読むと深いです。

 
実はというと、恥ずかしながらコンテンポラリーアートや絵画展などは
よく行くものの、工芸展にはほとんど行くことがなかったので、ある程度は
漆の工法等を聞いて言葉として知っていても、全然理解できていませんでした。
 
この展覧会を昨年から一年かけて企画されているイムラアートギャラリーの
久野さんから、いつものようにカッティングステッカーのお仕事をいただき、
内覧会に招待していただくというきっかけをもらいました。
せっかくなので、ネットで黒田辰秋関連の古本を数冊購入し予習して
行ったのですが、作品の意味や作り方がわかるとこれが面白い!
 
きっと無知のまま行ってたら、「へぇ〜美しいね」というような表面的な
見方しかできなかったんじゃないでしょうか。
 
黒田辰秋という人間国宝がこの世に残した作品展というよりは、
「彫刻家の魂を持った工芸家」の造形力を大いに感じて欲しい展覧会です。

会期は、10月9日(月)まで。

黒田辰秋展_9972
物販コーナーも充実しています。