奈良県立大学で開催中の、現代アート展『船/橋 わたす2018』
に行ってきました。
 
地域創造学部 西尾研究室による、地域資源を発掘したり、
異質なもの同士をつないだりする現代アートの力に着目した展覧会を
昨年から開催されています。
 
行くきっかけとなったのは、荒木由香里さんが
珍しく奈良で展示されているということからでした。
 
芸大でも美大でもない大学ですが、生徒達による企画で招聘作家
(荒木由香里さん、井上亜美さん、光岡幸一さん)を招き、
自らも各々テーマを決めて作品を出展されています。
 
 
では、簡単に作品の紹介をしていきます。

 
■小川美陽さんの《ネガ(記憶)》正門入ったすぐの右手 
昨年に海外留学した際に撮影したネガを炙って現像した1351枚の画像と、
当時に書き留めた日記の一部を抜粋したメモが貼られていて、
劣化による変形や変色は脳内で褪せていく記憶を表現しているといいます。
本人は「デジタル社会に対しての風刺」がコンセプトとのことだったので、
風刺になりきれてなかったのが惜しかったですが、
ビジュアルは良い感じのインスタレーションでした。

小川美陽さんの《ネガ(記憶)》

小川美陽さんの《ネガ(記憶)》2

 
■荒木由香里さん《帆、あるいは雲》地域交流楝の3階
図書館で不要になった多数の本とミラーフィルム、そしてレンズを使った
インスタレーションがあります。
研究論文など、生きているうちに出会うこともないだろう膨大な情報を
理解しようとも思えない(雲を掴むような感覚)に、レンズを通して凝視する?
はたまたミラーに反射させて混乱を招く?
全体は雲のように可変しえるインスタレーションでした。

荒木由香里さん《帆、あるいは雲》

荒木由香里さん《帆、あるいは雲》2


■井上亜美さん《まなざしをさす》3号館
作家自身が狩猟の免許を持ち、有害鳥獣駆除期間に猟犬を扱う勢子の役を
担った時のエピソードを文章と写真が交互に映る自動スライドによる展示です。
射殺した鹿が妊娠していたこともあったり、胎児は駆除の対象外だという
ルールなども聞いてると心が痛みました。

井上亜美さん《まなざしをさす》


■井上亜美さん《猟師は猛獣の夢を見る》3号館
こちらは、宮城県九森町で長年イノシシ猟をしていた作家の祖父への
インタビュー映像です。
「また脂がのった美味しいイノシシの肉が食べたい」と語る祖父は、
こう付け加えた。「放射能のないやつな。」と。
原発事故以降は猟をやめたという。

井上亜美さん《猟師は猛獣の夢を見る》

 
■光岡幸一さん《出口はつくれる》体育館横
フェンスの一部を学校には無断で切断し、白いドアを設置した作品です。
固定概念の一部を覆すだけでも、見え方が変わるということなんだとか。

光岡幸一さん《出口はつくれる》

 
なんとさり気なく、学校内図面にも勝手に油性マジックでドアを付け
足してありました。

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■丸山拓真さん《生き物になった建物》4号館
もう半世紀ほどの歴史がある建物で、あちこちがいたんでいる4号館が、
長年生きた証を可視化するために、赤く塗った木の枝を使って
血管を表現したんだそうです。 
実は、この4号館は、私にとってもすごく思い入れのある建物なんですが、
それは後で語ります。

丸山拓真さん《生き物になった建物》

 
■岸田なつきさん《「私」の障害者芸術》4号館
障害者施設でバイトする彼女は、障害者の日常を車椅子や施設内の音声によって、
障害者も楽しめる美術鑑賞のあり方を考えるのだそうです。

岸田なつきさん《「私」の障害者芸術》

 
■堀部七彩さん《下着における役割と形の再構築》4号館
身近にいる人から、下着はいやらしいものだと言われたことにより、
その下着がもつ役割とイメージを分解し、素材を変えたり、
用途を変えてみたり、様々な手法で試みた作品でした。
アプローチはユニークだったんですが、下着をどう見せたいのかなのか、
どういう用途にも使えるなのか、いまいちどこに落とし所があるのかが
わからないのが残念でした。

堀部七彩さん《下着における役割と形の再構築》

堀部七彩さん《下着における役割と形の再構築》2

 
■伊能怜さん《景観としての文字》4号館
彼の中にある思いを、室内外にカッティング文字を配置したインスタレーションです。
発想はみなさんが共感できそうなアイデアでしたが、ちょっと整理しきれていない
感じと精度の荒さが残念でした。

伊能怜さん《景観としての文字》

 
■喜多美緒さん《プライベートメッセージ》4号館
彼女は奈良県立大学ではなく沖縄にある名桜大学の学生さんで、
染色を勉強されています。
木陰が映る茜で染めた生地と藍で染めた生地により、植物が力強く生きる為に
虫達やその他の環境に発するメッセージを表現したのだそうです。
展示場所や作品の見せ方は良かったのですが、コンセプトが上手く
表現しきれていなかったかなという印象でした。

喜多美緒さん《プライベートメッセージ》

 
■西元里佳子さん《みえない家族》4号館
彼女の家庭は少し複雑で、母が1人、父が2人、妹が2人、祖父母が6人いて、
みんな血が完全に繋がっていないけど家族であることに、
「家族という関係性は何をもって定義されるのだろうか」という疑問を持ち、
撮った一枚の写真があります。
一見すると家族写真のように見えるが、全員が他人で、おばあさんに限っては
たまたま通りがかった人なんだそうです。

西元里佳子さん《みえない家族》

その他、お墓に対する思想や、漬物を使った作品など、面白い作品でした。

西元里佳子さん《みえない家族》2


13:00から西尾研究室の西尾先生と生徒さん達に混じって合評会に参加。

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15:00から西尾美也さん講師による県民講座「現代アートと地域想像」をきいて、
最後に四方遼祐さんによる一人演劇をみました。

西尾美也さん講師による県民講座「現代アートと地域想像」


芸大でもない大学のこういう試みは、すごく新鮮でしたし
ドップリ参加して良かったです。

会期は、10月28日(日) まで。

 
余談ではありますが、私は県内で最後に新設された
公立の登美ヶ丘高校の第1期生でした。
しかし、高校の新学期はスタートしたものの、校舎がまだ完成しておらず、
1年生260人は9ヶ月間だけ仮の校舎で過ごすことになったのです。
なんと、その仮校舎が今回展示会場となったボロい建物(4号館)でした。
32年ぶりに足を踏み入れるなんて想像もしていなかったので、
懐かしさに浸っていました。
この建物もあと2年ほどで解体されるらしいです。
(私の愛車のマジェスティーと校舎) 

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