二階武宏 展『刻線の迷宮』藤田典子 新作展『ghost fossils』@不忍画廊


現代日本の美術界では数少ない木口木版の使い手として知られる二階武宏は、
威容に満ちた原初的神獣をも髣髴とさせる綺想異風の幻獣を、選び抜かれた
生木の切断面に刻み続けてきた。
今までに積み重ねられたそのイメージの集成、いわば特異な幻想動物誌は
細部にまで秘技を操る版画家の手の神経が及ぶがごとく、われわれの
日々眺める現実を超えた鮮明と明晰を湛えて見る者をもう一つの現実へと覚醒した。
このたびの新作では二階はさらに鮮明・明晰を突き詰めて、迷宮感覚をも
惹起させるに至り、異域への道程を強固にしようとする意欲が伺われる。
一方、新作の油彩では、始原における生命の木や無定形の物質の誕生の
テーマも見られる。実のところ、かつての幻獣画においてもすさまじい
原初的発生のエネルギーは常に秘められていた。このテーマが二階の
制作意識をいかなるベクトルへと導くのか、今後の活動も期待に
胸膨らむばかりである。

美術評論家 相馬俊樹


二階武宏展 藤田典子新作展


私たちが生きる現実世界は、日々様々な物や情報を加速度的に増殖させながら
過ぎ去っていきます。
しかしその実態は不確かで曖昧なものであり、いつもどこか空虚感が漂って
いるように感じています。
自身の作品にはシルエットのみとなった顔のない人物が登場します。
彼らはそうした不確かなものに対し、前向きに立ち向かうでもなく傍観しており、
現代社会において希薄化、空洞化する自己の象徴のようでもあります。
過ぎ去っていく空洞のような日々を直視しつつ、それを受け入れる潔さのようなもの、
諦観の境地ともいえるようなものを求めています。
本展覧会では、不安、もがき、諦めといった、落ちてしまった深い穴の中から
空を見上げるような感覚を抱えながら、その先にあるものを求める人々の姿や
痕跡を投影した作品を出品いたします。

藤田典子
 

●会期
2018年11月5日(月)~11月17日(土)

【二階武宏作家在廊日】
11月10日、11日

【藤田典子作家在廊日】
11月10日
 

●会場
不忍画廊
東京都中央区日本橋3-8-6
Tel. 03-3271-3810
11:00~18:30
月休廊