井銅心平 展『器体の宴』@CRISPY EGG Gallery


井銅心平 器体の宴


井銅心平さんは1981年熊本県生まれ、現在37歳の陶磁器の作家です。
大学卒業後、現代唐津焼の窯「隆太窯」で中里太亀氏に師事し、
2010年より熊本県宇城市に設立した陶房「萩見窯」で制作をしています。
 
井銅さんの作る陶磁器は、極めて端整です。
日本の陶磁史に登場する様々な様式を踏襲・引用しているにもかかわらず、
その背景の重さを感じさせない特異さがあります。
様式を記号のように軽くまといながら、作品の種別ごとによく統制された成形は、
制御された焼成により、曖昧さの少ない端整なフォルムの器を生み出しています。
 
中里太亀という、現代唐津焼の中でも時代性や他の様式を積極的に取り入れることで
知られる作家の元で修行したことや、陶芸に進むきっかけであると本人が語る、
建築を学んだうえでより小さな単位のデザインに興味を持ったこと、少年期から
多彩な料理を家族や友人に振る舞う習慣があったことなどは、無視できない布石です。
いずれが要因にせよ、彼の作品が、符号や手の痕跡などといった共通のディテールから
「井銅心平」という作家性を見出させるよりも、手に取り料理や草花とともに
使う際の引き立て役となる方向へと精錬されていることに疑いはありません。
(実際に井銅さんの器は、複数の和洋の飲食店で提供に使われています。)
しかし、今回の展示は敢えて、実用からやや距離を置いたものとなります。
 
そもそも器の展示は、作家のもとと使い手の間に位置する中間地点であり、
特に料理や草花との親和性の高い器にとっては、その身体そのものの総合的な
可能性を試行する数少ない機会です。実用上の評価につながりやすい器だからこそ、
その結果を招く過程としての展示では、より自由な振る舞いの可能性を提示するのが、
中間地点としての正しい役割ではないでしょうか。
このような考えから、本展は、井銅心平さんの器の「展示という場だからこそ見られる
振る舞いを展示する」という俯瞰的な試みが、「器そのものがどう振る舞いうるかを探る」
という、実用上の評価のための視点と接続する場として機能させることを狙いとしています。
 
そのためにまず、 井銅さんの器作品を、料理や草花のイメージから引き離ししました。
このとき、器(うつわ)は食器・花器といった外から与えられた価値をいったん失い、
そのフォルムのみを残した「器体(きたい)」として、より多くの振る舞いを獲得します。
一般的な助詞関係「宴の器」とは逆になる『器体の宴』という展示タイトルも、
同様の狙いによるものです。
器体の振る舞いが人間の実用的目的に先行する展示という場で、まだ料理や草花と
出会う前の、実用におけるモラトリアムにある器たちが、その「器体」でどのように
振る舞うことができるかをめいめいに試みる。その姿もまた、宴と呼ぶことができ、
それを見ることは、舞や踊りを目で追うのと同じように、きっと器体への理解へと
つながることでしょう。
 
この展示が井銅さんの器の新たな面を引き出し、ひいては使用される方々の実用的な
試行にも役立つことを期待しています。
 
企画 中元寺琢磨
 

●会期
2019年1月31日(木)〜2月17日(日)
13:00〜19:00
休廊日 月〜水


●会場
神奈川県相模原市中央区淵野辺3-17-5